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「茯敏」商標に係る三年不使用取消審判の事件

「茯敏」商標に係る三年不使用取消審判の事件

商標は、「正当な理由なしに連続して3年間使用していない」場合は、商標法第63条第1項第2号に該当し、商標専属責任機関が職権又は請求によりその登録を取り消さなければならない」。

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商標は、「正当な理由なしに連続して3年間使用していない」場合は、商標法第63条第1項第2号に該当し、商標専属責任機関が職権又は請求によりその登録を取り消さなければならない」。しかしながら、使用商標は、係る登録商標の使用に該当しているか否か、又、登録された指定商品と実際の使用商品が同性質を持つか否かに係る判断基準が定まらないので、以下の案件をもって解説する。

知的財産裁判所110年度行商訴字第22号の判決について:

                【係争商標の情報】
 商標名:茯敏
 商標権者:婦潔藥品有限公司
                  (VIGILL PHARM. CO., LTD.)       
 台湾商標登録番号:00949519
 出願日:2000年1月7日
 登録日:2001年7月16日
 商品の区分:5
 指定商品:漢方薬、西洋薬

【商標見本】

 

 

※事件の概要:

取消審判の請求人である「民間全民電視股份有限公司(民視テレビ局)」は2020年4月9日に、「登録第00949519号商標は、3年以上指定商品に使用されていないことは明らかであることから、商標法第63条第1項第2号に該当しているので、該商標権を取り消すべきである」との理由をもって、係争商標である登録第00949519号商標に対して3年不使用取消審判を請求した。その後、知的財産局が審査した結果、「係争商標が実際に使用された商品が性質的に指定商品と異なることから、係争商標は、3年以上指定商品に使用されていないことが明らかであるので、その登録を取り消す」との旨の処分を下したが、原告(登録権者)は、処分に不服を有することから、訴願、続いて行政訴訟を提起した。それに対して知的財産裁判所は、「係争商標が実際に使用された『乳酸菌』は、特殊菌種を提供することを目的とする商品であり、性質的に類似群コード『栄養補充品』に属するのに対し、指定商品の『漢方薬、西洋薬』の目的は、病気を治療・矯正することであることから、両者は用途、作用、及び目的において全く異なると共に、上下位概念に該当しなく、互いをカバーするような関係でもないので、『乳酸菌』に係る使用証拠を以って、係争商標が『漢方薬、西洋薬』に使用されていることを立証することができない。従って、係争商標は、『漢方薬、西洋薬』に使用されたことは認められないので、訴訟を却下する。」との旨の判決を下した。
 

知的財産裁判所の判決(知的財産裁判所110年度行商訴字第22号)における裁判官の見解:

原告(登録権者)は、指定商品の「漢方薬、西洋薬」に対する取消処分に不服を申し立てた。本判決の主旨は、「乳酸菌」商品に係る係争商標の使用実績資料は、指定商品「漢方薬、西洋薬」の使用を立証できるか否かについて論述する。

1. 薬品と食品は、法律上での意味、規制の目的や管理方法において全く異なっている。
最高行政裁判所2015年度判字第429号判決によると、「商標が実際に使用されている商品と指定商品が同一であるか否かは、社会通念により、両商品の用途、機能及び目的について判断すべきである。また、指定商品と使用商品が上位下位概念、包含関係、重複関係にある場合、使用商品は指定商品に含まれると認定することができる。」、なお、薬品とは、薬事法の規制対象でなくてはならないと共に、薬商にはライセンスが要求されており、製薬工場も製薬許可が必要であるのに対し、食品は、事前の審査がなく、業者が自主的に管理し、食品安全衛生管理法に従えば問題はない。

2. 「乳酸菌」に使用されていることは、「漢方薬、西洋薬」に使用されていることにはならない。
「乳酸菌」は、特殊菌種を提供することを目的とする保健商品であり、「栄養補充品」の類似群に属し、一方、「漢方薬、西洋薬」との商品の目的は、病気を治療・矯正することであることから、両者は用途、機能、目的において異なると共に、上位下位概念、包含関係、重複関係にあるわけではないので、たとえ台湾では、「薬食同源」との食文化があり、保健の話題ではよく薬品と食品を同列に論じたとしても、両者はしっかりと区別され、管理されるべきである。上記を踏まえて、「乳酸菌」と「漢方薬、西洋薬」とは、同一商品ではないことから、乳酸菌に係る使用実績を以って、係争商標が漢方薬、西洋薬にも使用されていることを立証することはできない。

3. 上記を踏まえると、係争商標は、取消請求日前の3年間、指定商品の「漢方薬、西洋薬」に使用されていないことを判断できる。
 

知的財産局による当該判決に対するコメント:

本件の判決において、「栄養補充品」と「薬品」の機能、用途及び目的について、明確に区別を付けた。係争商標が実際に使用されていたのは、保健機能を持つ「栄養補充品(乳酸菌)」であることから、「漢方薬、西洋薬」の使用実績として認められない。
  上記の判決結果によると、登録商標が指定する使用範囲は、実際の経営範囲とは一致しなければならない。また、登録されて一定期間が経つと、業務の発展につれて、商標が実際に使用されている範囲も変化が起こり得ることから、商標権者は定時的に登録された指定商品や役務の範囲を確認すべきであると共に、十分な保護を受けられなくなった場合には、新しい指定商品で再出願することを勧める。


筆者の見解:

登録商標の使用に関し、台湾知的財産局が公表した「登録商標使用の注意事項」において、「指定商品・役務のうち、実際に使用されている商品・役務のみならず、これと相当する性質又は同一性質を有するものについても、使用していると認定することができる」ことが明記されているが、同性質の認定は、色々な要素を総合的に考慮しなければならないことから、安定性に欠けているので、実際の使用商標は、該指定商品・役務の使用に当たるか否かを判断する時は、一般社会通念をもとに、それぞれの商品/役務の性質をじっくり見極めてから、下記のような捉え方で、同性質の商品/役務についての使用であるか否かを判断した方がよいと考える。

1)実際に使用している商品/役務が指定商品/役務と明らかに同性質のものである場合:
一般社会通念をもとに、実際に係争商標を使用している商品/役務と指定商品/役務の用途、機能及び目的などについて比較し、同性質を有すると共に、所属する類似群コードも一致する場合、原則的には、取消審判における同性質の商品の使用として認められる。例えば、類似群コード0503の見出しである「栄養補充品」は、該類似群に分類されている「医療用栄養品」又は「医療用蛋白質食品」などとは同性質を有するものと判断される。

2)実際に使用している商品/役務が指定商品/役務と明らかに性質が異なる場合:
   一般社会通念及び消費者の認識をもとに、実際の商品/役務と指定商品/役務それぞれの内容、専門技術、用途、機能及び目的などについて総合的に判断した結果、両者の性質が明らかに異なる場合、例え実際に係争商標を使用している商品/役務と該指定商品/役務が共に知的財産局が公表した「類似商品及び役務区分表」に基づくものであり、同じ又は相互検索が必要な類似群コードに属したとしても、同性質の商品の使用として認められない。この場合、係争商標に係る実際の使用実績資料は、該指定商品の使用を立証することは認められません。例えば、指定商品の「水加熱器(機械部品)」と実際の使用商品「ローラー」は、共に類似群コード0729の「他類に属さない機械部品」に属したとしても、用途が全く異なる場合、同性質を持つ商品ではないことが明白である。

なお、本件の場合においても、実際に係争商標を使用している「乳酸菌」は栄養補充品に当たり、薬品として認められない。又、法律上での意味、規制の目的や管理方法において、全て薬事法に承認される薬品とは相違していることから、確かに薬品と異なる性質を有し、指定商品である「漢方薬、西洋薬」の使用に該当しないと考えられる。

一方、請求人である「民間全民電視股份有限公司」は、2019年9月11日に、「娘家好茯敏」をもって出願したが、上記係争商標の登録第00949519号「茯敏」商標と類似することにより拒絶されたことから、上記3年不使用取消審判を提起し、係争商標を取り消した。このことから、請求人の「娘家好茯敏」商標は、2022年1月16日に登録第2195356号として登録を受けた。これに対し、取り消された係争商標の権利救済について、係争商標の権利者である「婦潔藥品有限公司」の方が先に「茯敏」との独創的な語彙を使用した事実があることから、「婦潔藥品有限公司」は、以下の手続きを進めている。
 

1. 2020年10月15日に「栄養補充品」を指定した「茯敏」を再出願した。出願番号は第109072078号である。

2. 又、登録第2195356号「娘家好茯敏」商標は現在公告中であることから、商標法第30条第1項第11号(著名商標)、第12号(商標盗用)の規定に基づき、異議を申し立てると思われる。

  • 商標法第30条第1項第11号:商標が、「他人の周知商標又は周知標章と同一又は類似のものであり、そのために、関係公衆に混同を生じさせるか又は当該周知商標又は周知標章の識別性又は名声を減殺するおそれのあるもの」(著名商標)である場合は、登録を受けることはできない。
  • 商標法第30条第1項第12号:商標が、「同一又は類似の商品又は役務について他人が先に使用している商標と同一又は類似のものであり、かつ、出願人が当該他人との契約上、地理上若しくは事業上の関連又はそれ以外の関係から、前記商標の存在を知っていると共に、模倣の意図を有し、出願によって登録を求めるもの」(商標盗用)である場合は、登録を受けることはできない。
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