本ウェブサイトは情報提供のみを目的としており、法的アドバイスやサービスを構成するものではありません。また、この情報は、必ずしも当所またはそのクライアントの意見を表すものではありません。法的及び知的財産に関するアドバイスが必要な場合は、お気軽にお問い合わせください。
本ウェブサイトでは、利用者の閲覧体験を向上させるためにCookieを使用しています。本ウェブサイトを閲覧し続けることにより、お客様はCookieの使用に同意するものとします。

我が国における投影型の画像意匠についての簡単な説明

我が国における投影型の画像意匠についての簡単な説明

新たな技術の発展に伴い、デザインされた画像を、電子製品のモニターに表示する以外に、壁面や、テーブル面、又は地面に投影したり、拡張現実(Augmented reality, AR)や、バーチャル・リアリティ(Virtual reality, VR)などの電子装置によって、人の周りに表示することもできる。

More Details

BY 黃俊仁

新たな技術の発展に伴い、デザインされた画像を、電子製品のモニターに表示する以外に、壁面や、テーブル面、又は地面に投影したり、拡張現実(Augmented reality, AR)や、バーチャル・リアリティ(Virtual reality, VR)などの電子装置によって、人の周りに表示することもできる。また、画像は、コンピュータプログラムにより生成されるものであり、あらゆるデジタル製品に応用することができるので、画像を意匠登録とした場合の保護範囲は、実体物の応用のみに限定されるべきではないと考える。

我が国の知的財産局は、新たな技術の発展を踏まえ、意匠(台湾では設計専利と称する)の制度を検討した後、審査基準第三篇の意匠実体審査における一部の内容を改正し、2020年11月1日より施行した。今回の改正内容においては、現在の技術発展や産業界の実際のニーズに応えるために、画像意匠におけるコンピュータアイコン(Computer Generated Icons)及びグラフィカルユーザインタフェース(Graphical User Interface, GUI)等の意匠が実体物の応用のみとの制限を解除し、画像意匠を、「コンピュータプログラム製品」などの実体を有しないソフトウェアやアプリケーションへの応用が認められるようになり、それと同時に、明細書と図面の記載方式に関する制限を緩和したので、これにより、ソフトウェア業者がより確実な意匠保護を得られるようになった。更に、2021年5月には、出願書類の作成の参考として、「意匠出願の明細書及び図面の記載の手引き」が公表された。

現行の意匠審査基準には、「画像意匠は、物品に応用されるコンピュータアイコン及びグラフィカルユーザインタフェースを保護するものであり、そのコンピュータアイコン及びグラフィカルユーザインタフェースとは、コンピュータプログラム製品により生成され、各種の電子製品の表示装置(ディスプレイ)を介して表示、又は投影された2次元、または3次元の画像を指す」との記載を有し、その記載内容によると、「コンピュータプログラム製品により生成された画像だけが、画像意匠として出願できる一方、非コンピュータプログラム製品により生成された画像は、画像意匠として出願できない」と理解できる。例えば、乗り物が画像投影装置を通して地面に投影された画像は、コンピュータプログラム製品により生成された画像であるかが定かではないので、その投影画像を画像意匠として出願できるか否かについて、この度の改正内容において具体的に説明されていない。

一方、日本では令和元年(2019年)に大幅に意匠制度が改正され、その改正後の意匠法第2条においては、「この法律で「意匠」とは、物品(物品の部分を含む。)の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合、建築物(建築物の部分を含む)の形状等又は画像(機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限り、画像の部分を含む。)であって、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。」との意匠の定義が明記されており、その定義よると、「画像意匠は、コンピュータプログラムにより生成された画像でなければならない」との限定がないのに対し、「機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるもの」のみが限定されているので、物品との一体性の観点から見ると、日本意匠法の修正内容における画像意匠の保護範囲は、我が国の現行の保護範囲に比べてより広いと言える。

また、日本特許庁の説明資料によると、画像意匠は、コンピュータプログラムにより生成されたコンピュータアイコン及びグラフィカルユーザインタフェース以外に、下図に示した通り、画像投影装置により路面、人体、又は道路(物品以外の場所)に投影された画像も画像意匠として出願できる。


なお、日本経済産業省のホームページには、「令和2年に新たな意匠法を適用後、日本初の投影型の画像意匠、即ち、以下に示した意匠登録第1672383号「車両情報表示用画像」(出願人は、株式会社小糸製作所である)が登録された」ことが掲載されている。



 

上記意匠登録の【意匠に係る物品の説明】における「この画像は、画像投影装置付き車両(バイク)より路面に照射される画像である。画像図で表した画像は、使用状態を示す参考図1乃至3のとおり、走行時もしくは停車時に車両の周辺に照射され、外部から車両の存在を視認しやすくさせる。また、本画像は、運転手に車両周辺の路面の状況を視認しやすくさせる。車両が進行方向を変更するとき、画像図、及び、変化した状態を示す画像図1及び2のとおり、変更向きに応じて変化して照射される。」との説明によると、当該意匠は、「機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるもの」との規定を満たしていることがわかる。

前記投影型の画像意匠以外に、令和2年から現在までに、車両情報に関する画像意匠について、例えば、JPD1696569S、JPD1696568S、JPD1696567S、及びJPD1696566Sなどの「車両情報表示用画像」や、JPD1691790S、JPD1683754S、及びJPD1683753Sなどの「車両動作伝達用画像」、JPD1677600S、及びJPD1676765Sなどの「進行方向表示用画像」などが公表され、それらの画像意匠の画像は、車両(自動車、バイク)の画像投影装置によりて直接に路面に照射されるものであることから、画像自体は、リバーサルフィルムにライトによる光を透過させて地面に投射することで生成されることができ、必ずしも、コンピュータプログラムにより生成する必要はない。これにより、コンピュータプログラム製品以外の手段で生成された投影型の画像意匠でも、意匠で保護することが可能となったが、我が国の現行の「コンピュータプログラムにより生成された画像だけが、画像意匠として出願できる」との規定によると、前記投影型の画像意匠は、我が国の現行規定を満たすことは困難であると考える。

更に、画像意匠の保護範囲は、図面に示した内容に基づくものであるので、例えば、前記日本意匠登録第1672383号「車両情報表示用画像」における図面の表現方式では、【画像図】と、【変化した状態を示す画像図】等の図面内容を保護対象とし、他の【使用状態を示す参考図】が、車両の画像を加えることにより、使用時における車両との位置関係を示し、車両の形状を限定するものではないことから、日本の修正後の意匠制度によれば、投影型の画像意匠に対する保護範囲はより広いものであるので、権利者がより有利な保障を得ることができる。

ここ数年、我が国の知的財産権保護制度に対する検討や改正によって、画像意匠として出願可能な範囲が拡大されてはいるが、日本での前記範囲と比べて、我が国の範囲はやや狭い。但し、投影型の画像意匠は、一部の産業において独特な応用性を有することから、台湾の知的財産局に、日本の意匠制度の改正内容を参考し、コンピュータプログラム製品以外の手段で生成された投影型の画像意匠も意匠出願の対象に含めるかについて明確な説明を提出し、更に、そのような画像意匠の図面の記載方式に関する、具体的な説明例を提供されたいと考える。

※詳細については、ipdept@taie.com.twまでお問い合わせ下さい。
 

Line Line
Line Line
Line Line
Line Line