本ウェブサイトは情報提供のみを目的としており、法的アドバイスやサービスを構成するものではありません。また、この情報は、必ずしも当所またはそのクライアントの意見を表すものではありません。法的及び知的財産に関するアドバイスが必要な場合は、お気軽にお問い合わせください。
本ウェブサイトでは、利用者の閲覧体験を向上させるためにCookieを使用しています。本ウェブサイトを閲覧し続けることにより、お客様はCookieの使用に同意するものとします。

AIが特許発明者になれるかについての我が国の判決が出された

AIが特許発明者になれるかについての我が国の判決が出された

2021年7月1日に新設された知的財産及び商業裁判所は、8月19日にこの議題に関する行政判決を下し、このグローバルな議題に対する我が国の姿勢を表明した。

More Details

特許制度が500年前に創設されて以来、またはパリ条約が施行された以降100年以上もの間、発明は人間によってなされるものであることは、一般的に認識されている概念である。科学技術の発展に伴い、自己学習能力及び高速演算機能を備えた人工知能(AI)が我々のように発明者になれるかは、近年注目されている話題であり、将来直面しなければならない課題でもある。

 

BY 王錦寛

2021年7月1日に新設された知的財産及び商業裁判所は、8月19日にこの議題に関する行政判決を下し、このグローバルな議題に対する我が国の姿勢を表明した。

出願人THALER、Stephen L(以下、THALER氏と称す)は、DABUSのAIシステムを発明者として2つの出願を行い、そのうち、第1の出願は2018年10月17日に、第2の出願は2018年11月7日に、それぞれイギリス及び欧州特許庁に出願し、その後、優先権を主張して米国、ドイツに出願した。更に、2019年9月17日に、THALER氏は両出願を合併してPCT国際出願を行い、各国の国家段階に入った。

そのうち、我が国の判決に係る特許出願は、THALER氏の第2の出願である。今のところ、南アフリカはAIを発明者とした世界初の特許を認めており、オーストラリア連邦地裁はオーストラリア特許庁の見解を覆し、AIを発明者とすることを認めた。ただし、韓国、米国、イギリス、ヨーロッパ等は、反対の決定を下し、発明者は人間、つまり自然人でなければならないとした。

我が国の判決に係る出願は、2019年11月5日に知的財産局に提出され、発明者としてNONE、DABUSのみが記入され、国籍及び中国語名称が記載されていないことから、知的財産局は、同年11月11日に書類の補足を要求した。これに対し、出願人は、2020年4月30日に、本出願の内容はDABUSである人工知能システムによって発明され、本願の唯一の発明者であると応答した。同年5月5日に知的財産局は、再び自然人を発明者として提出すべきであることを要求し、出願人は、同年6月5日に、本出願はAI独自で発明され、自然人とは関係がないと応答し、この応答を受けた知的財産局は、出願人が期限内に補正を行わなかったとして、2020年6月29日に出願不受理の処分を下した。その後、出願人は、訴願及び行政訴訟を提起した。

THALER氏は、我が国には発明者が自然人であるかどうかを審査すべき規定が存在しないことから、発明者が自然人であるべきという理由でこの出願を却下すべきではないと共に、南アフリカの特許庁がDABUSを発明者として認めたことを理由に、本出願の申請を受け入れるべきであると主張したが、その主張は、明らかに知的財産局に認められなかった。

知的財産局は、発明は人間の精神的な活動による結果であり、特許法において、発明者が自然人でなければならないことは明確に規定されていないが、発明者は権利能力を持つべきであり、その権利能力を所有できるのは、自然人または法人のみである。さらに、特許法条文解釈及び特許審査基準のいずれもにも発明者は自然人でなければならないことが明確に規定されていると共に、南アフリカを除いて、その他のほとんどの国においては、発明者は自然人であるべきと認定したため、意思能力を有しないAIが権利出願の主体とはならず、発明者としての資格を有しない、との見解を示した

裁判所は、知的財産局の意見を全面的に受け入れ、AIは法律上のいわゆる「人」ではなく、本件のDABUSは、我が国の法律上の「物」に該当し、権利の客体に属して権利の主体とならなく、権利能力及び資格を持つものではないので、発明者としての自然人が欠如する場合、知的財産局による出願の不受理処分は違法とは言えない、との旨の判決を下し、原告の訴えを却下した。

我が国の判決は、今年7月29日に弁論を終結したが、オーストラリア連邦地裁は、7月30日にAIを特許発明者として認める世界初の司法判決を下した。AIは将来の研究開発において重要な役割を果たすとされていることから、今後も、THALER氏が各国の特許当局、裁判所を舞台に争い続けると予想されるので、AIを発明特許の発明者として認められるかについては、依然として物議を醸す問題となるに違いない。

※詳細については、ipdept@taie.com.twまでお問い合わせ下さい。

Line Line
Line Line
Line Line
Line Line