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2019年改正特許法施行後の無効審判に対する実務的観察及び検討

2019年改正特許法施行後の無効審判に対する実務的観察及び検討

2019年11月1日に施行された改正特許法が達成しようとする目的は、無効審判の審査効率の向上にある。本文は、審査実務に対する観察に基づき、無効審判の当事者が提出した理由、証拠及び答弁、意見書の陳述内容、並びに延期の理由等の側面から検討を行ったものである。

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BY 編集部

2019年11月1日に施行された改正特許法が達成しようとする目的は、無効審判の審査効率の向上にある。本文は、審査実務に対する観察に基づき、無効審判の当事者が提出した理由、証拠及び答弁、意見書の陳述内容、並びに延期の理由等の側面から検討を行ったものである。

この度の改正特許法では、無効審判の審査効率を向上させるために、無効審判請求人の理由や証拠の追送可能時期、及び、特許権者の無効審判の審査期間における訂正可能時機に対して制限を加えた。以下、「係る規定は、我が国の無効審判の審査過程の実務現況を満たしたか」や、「その作業方式は、当事者両方の手続的の公平性及び特許主務官庁の無効審判の審査効率に直接的な影響を与えたか」について、統計データを用いて説明する。

本文の統計期間は改正特許法の施行前後13ヶ月の期間(2019年7月~2010年7月)であり、分析の母集団は501件の無効審判案件であり、そのうち、審査期間において延期を請求した案件は計329件で、包袋閲覧やコピーを請求した案件は計101件で、特許法第74条第4項に基づいて無効審判理由の追送を求めた案件は計38件であった。以下に、詳しく説明する。

(一)延期を請求した329件は、手続段階の延期及び審査段階の延期を含み、それらのうち、延期の請求が許可された306件と参考としてファイルにまとめたか又はそのまま合併審査した20件とで合計326件(99%)あり、延期の請求が拒絶された案件は3件(1%)あり、また、該3件のうち、2件は、調査の結果、その理由は明らかに事実に該当しないことにより延期の請求が拒絶されたものであり、残りの1件は、無効審判の三ヶ月後に延期の請求を提出したものである。実証的な統計結果によると、当事者双方のほとんどは、延期の請求手続を利用して合理的な理由を提出することにより、延期が認められた。

(二)包袋閲覧を請求した101件は、母集団の501件の約20%であるので、約20%の無効審判請求人は、無効審判の進捗状況を把握するために、包袋閲覧を請求したことが分かった。また、包袋閲覧後に無効審判補充理由を追送した案件は計36件であったので、積極的な無効審判請求人にとって、特許権者による答弁を再度攻撃するために、包袋閲覧はよく採用される手段であることが分かった。更に、包袋閲覧後に無効審判補充理由を追送した36件のうち、適法的に無効審判補充理由を追送した案件は29件(80.6%)で、期限を過ぎて無効審判補充理由を追送した案件は7件(19.4%)あったので、実務上、大概の無効審判請求人は、改正法の規定に従い、法定の3ヶ月以内に無効審判補充理由を自発的に追送したか、或いは、特許主務官庁が職権によって発行した通知書を受けた後の1ヶ月以内に又は延期後の期限内に無効審判補充理由を追送しており、ごく僅かな無効審判請求人は、改正法に規定する期限を過ぎて無効審判補充理由を追送したことが分かった。以上により、特許主務官庁による宣伝は一定の効果を成し遂げたと判断できる。

(三)当局が、特許法第74条第4項に基づき、無効審判補充理由の追送を求める必要があると判断した案件は計38件あり、そのうち、無効審判請求人に対し意見を示すための無効審判補充理由を追送するよう通知した案件が27件で、無効審判請求人に対しその意見を闡明するための無効審判補充理由を追送するよう通知した案件が11件あった。更に、前記二種の態様において引用した証拠の種類について分析したところ、特許主務官庁が、無効審判請求人に対しその意見を闡明するための無効審判補充理由を追送するよう通知した案件のうち、3件は新証拠を提出したので、「特許主務官庁が、闡明権を行使し、無効審判請求人へ通知した場合、大概の無効審判請求人は、闡明範囲内において無効審判補充理由を追送した」ことが分かった。ただし、一部の無効審判請求人は、闡明の機会を利用して、元証拠又は理由の範囲を顕著に超えたものを提出したことから、これは、特許法第74条第4項の「無効審判の審査期間の短縮」との法改正の目的に違反しているので、闡明すべき範囲を顕著に超えた新証拠の部分については認めないべきである。

この度の特許法の改正では、「当事者双方が何度も資料を追送することで、審査の進行が遅滞してしまう」ことを避けるために、無効審判請求人が理由や証拠を追送できる時期、及び、特許権者が訂正を提出できる時機を制限した。前記実証的な結果からも分かるように、公衆は、改正法における係る規定を一定程度理解していると共に、係る規定に基づき、無効審判の過程において合理的な対処方法を採用することができるので、「当事者双方の手続的公平性と、特許主務官庁の無効審判の審査効率とのバランスをとる」との効果は初歩的に達成されていると考える。ただし、本文において集められた案件は、改正法施行後の9ヶ月の期間内に審査が行われた案件であることから、統計用のサンプル数が充分と言えないので、より一層精確な分析結果を得るためには、今後、無効審判の案件を集め続け、十分な母集団に対する分析を行うべきである。


原文:2021.3 知的財産権月刊 VOL.267
https://www.tipo.gov.tw/tw/cp-182-887388-6fc8c-1.html
(本文は作者の同意を得て和訳して転載するものである。)

 
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