「除くクレーム（Disclaimer）」について、【台湾専利審査基準第二篇第六章 4.2.2許可される削除の（7）】には、「排除後の標的をポジティブな表現方式で明確且つ簡潔的に特定できない場合、先行技術と重複する部分を『除くクレーム（Disclaimer）』とするネガティブな表現方式で記載できる」ことしか記載されておらず、「先行技術」に対する解釈は十分且つ明確でないことから、文言から解釈した場合、「進歩性欠如の拒絶理由に引用された文献」も、「先行技術」に属するので、実務上、従来から進歩性欠如の拒絶理由を解消するために、「除くクレーム（Disclaimer）」が多用されていた。
しかしながら、台湾知的財産局が2020年11月19日に、「除くクレーム（Disclaimer）」に対する解釈を公布し、その内容によると、前記専利審査基準に記載の「先行技術」は、「①新規性を否定する引用文献」、「②拡大先願の拒絶理由に引用された文献」、及び「③先願主義の違反に係る引用文献」との三つの態様で引用されるものに限られ、即ち、新規性や先願主義に関わる規定を違反する場合しか、先行技術と区別するため、「除くクレーム（Disclaimer）」とすることができないことが分かった。
また、前記の解釈内容に対し、業界よりの質問に対し、台湾知的財産局は以下のように説明した。
Q1：
「『先行技術』は、三つの態様に限られる」と解釈したが、その内容は、台湾専利審査基準に記載されていないので、今回の解釈は、審査基準に新規事項を実質的に追加することになるのではないでしょうか。
A1：
台湾専利審査基準第二篇第三章2.2.1及び2.6.1には、「『先行技術』は、『出願前に既に刊行物に記載されたもの』及び『その出願より先に出願され、かつその出願後初めて公開又は公告されたもの』を指す」ことが記載されており、且つ台湾専利審査基準において列挙した説明例は、「排除式の補正は、単一な先行技術と重複する部分を排除することに限られる」ことを説明するものであることから、今回の解釈は、台湾専利審査基準の記載内容をより明確にするために、審査基準の開示内容をまとめたものであるので、「審査基準に新規事項を追加する」ものではない。
また、「進歩性欠如の拒絶理由に引用される文献」は、「発明との関連性」、及び「技術特徴における相違点は、先行技術から容易に完成し得るものであるのか」について考慮しなければならないことから、新規性欠如の拒絶理由を解消するための状況と異なる。また、進歩性欠如の拒絶理由に引用される文献は複数であることが多く、単一な先行技術が明確な範囲を有することと異なっている。故に、「除くクレーム（Disclaimer）」とすることにより進歩性欠如の拒絶理由を解消しようとする時、明確且つ一致する判断標準を得ることは難しく、紛争を起こしやすい。
Q2：
もし、貴局が新規性欠如を一切指摘せず、進歩性欠如の拒絶理由のみとした場合、出願人が【審査基準第二篇第六章4.2.2の（7）】の規定に基づいた「除くクレーム（Disclaimer）」とする補正を簡単に阻止することができるので、今回の解釈は、不合理な部分を有するのではないか。
A2：
当局の審査は出願する発明と先行技術との対比結果により、新規性または進歩性を有するかを判断するので、新規性欠如と判断した場合に進歩性欠如の拒絶理由とすることはあり得ない。当局の進歩性欠如の認定に疑問があり、進歩性欠如ではなく、新規性欠如であるべきで排除式補正で先行技術と重複する部分を排除できると判断した場合、答申理由に明記した上、答申理由書と補正書とを同時に提出すればよい。
台湾知的財産局に公布された内容の和訳：
除くクレーム（Disclaimer）の方式で請求項を補正又は訂正することは、単一な先行技術と重複する部分、或いは法定により特許を与えない標的を排除することしか採用できない。
一、審査基準第二篇第六章4.2.2の（7）に記載されている、排除式の補正に係る規定によると、「ネガティブな表現方式で先行技術と重複する部分を記載する」ことができるが、その中の「先行技術」は、下記三つの態様に限られる：
1.新規性欠如に係る引用文献を克服するために（第22条第1項第1号）。
2.拡大先願に係る引用文献を克服するために（第23条）。
3.先願主義の違反に係る引用文献を克服するために（第31条）。ただし、「同日で出願する」ことに係る引用文献に対しては、当該排除式の補正を適用できない（第31条第2項を除く）。
二、物の請求項における、「人間」に係る部分を排除する。
三、方法の請求項における、「生命を有する人体又は動物体に実施する工程」を排除する。
参考ウェブサイト：
https://www.tipo.gov.tw/tw/cp-85-883542-7afc9-1.html
※詳細については、ipdept@taie.com.twまでお問い合わせ下さい。
