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近年の意匠に関連する法律改正と審査実務の変革

近年の意匠に関連する法律改正と審査実務の変革

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BY 編集部
 

時代の発展は停止せず、法改正は、時代と共に歩むとは言えますので、台湾知的財産局は、過去の10年間における、意匠に係る専利法や審査基準の改正を纏めて、以下の文章[1]を発表しました。
 
現在の意匠保護制度の基礎は2013年の専利法の改正によりほぼ築かれました。2013年の法改正以降、意匠は今もなお一部法改正や審査基準の変革が続いています。以下に、いくつかの重要な法改正及び審査基準の変革について説明します。
 
一、2016年版審査基準:色彩を含む図面の開示規定などを調整

2016年版の審査基準において、重要なポイントは、色彩を含む図面の開示規定を調整し、「元の範囲を超える補正」の判断事例及びその他の文字の修正された内容を追加しました。また、その中でも、色彩を含む図面に関する審査実務は大きく変革してきました(表1参照)。
 
表1.色彩を含む意匠図面に係る審査実務の変革

   2004年施行細則及び   
 2005年版審査基準
 2013年施行細則及び
 審査基準
 2016年版審査基準
 色彩を含む開示原則  記載されている色票番   号又はカラーカードに
 基づく
 図面に開示された色彩に基づく
 例外の規定  図面に色彩が表示され
 ていても、工業色票番
 号、カラーカードが添
 付されていなければ、
 色彩が含まれていない
 ものとみなす。
 図面に色彩が表示され
 ていても、色彩を主張
 しない場合には、色彩
 は意匠の一部ではない
 ことを文字で説明しな
 ければならない。
 図面は墨線図、グレー
 スケールのコンピュー
 ターグラフィックス、
 又はモノクロ写真のみ
 により表示すべきであ
 り、図面で色彩を表現
 しているにもかかわら
 ず、文字だけで声明し
 てはならない。

 

二、2017年度専利法:グレースピリオドの適用要件を緩和

2017年度専利法改正の要点は、発明、実用新案、意匠のグレースピリオド(Grace period)に関する規定を改正することであり、この改正により、グレースピリオドの適用要件が緩和され、且つ、発明と実用新案のグレースピリオドを12ヵ月に延長したものです(意匠のグレースピリオドは依然として6か月です)。

 
2017年度専利法改正前、意匠のグレースピリオドの適用要件は「出版物への掲載によるもの」、「政府主催または公認の展示会への展示によるもの」、「出願人の本意に反する漏洩」に限定されていましたが、2017年の専利法改正後、公開態様が緩和されると共に、「出願時にグレースピリオドの主張を声明する」との要件が削除されました。「出願人の本意により」或いは「出願人の本意によらずに」公開された事実のいずれにも、出願人はグレースピリオドを主張することができます。
 
この緩和により、これまでの意匠審査実務における「政府主催又は公認の展示会」の認定問題が解決されました。専利法が改正されてから、出願人自らによる公開或いは出願人の同意を得た者による公開、及び出願人の同意なく他人が漏洩したものであれば、新規性や創作性を損なうことなく前述の所定の期間内でグレースピリオドを適用できるため、意匠アイデアの公開や流通が促進されるだけでなく、意匠の出願時期の柔軟性も高まりますので、意匠出願意欲の向上に寄与します。
 
三、2019年版専利法では、意匠権の存続期間がさらに延長されました。

意匠権の存続期間は何度も改正され、最初、意匠権の存続期間は公告日から起算して5年でしたが、1994年より出願日から10年、1997年より出願日から12年に改正され、それから20年を経て、2019年の法改正において、出願日から起算して15年に延長されました。
 
この改正は、各国の意匠の保護期間を参酌したものです。各国の規定は大きく異なり、国際工業意匠に関するハーグ協定と米国の意匠権の存続期間は15年であり、EUでは最高25年の保護が与えられ、また、近年、日本や韓国では法改正が相次ぎ、意匠権の存続期間は当初の20年から25年に延長されました。一方、我が国では当初の12年ではまだ不十分であることから、意匠権の存続期間を延長するという外部の要望に応えると共に、ほとんどの国が依然としてハーグ協定で定められた15年を参照していることを考慮した上で、我が国は2019年に専利法を改正し、意匠権の存続期間を15年に変更しました。
 
四、2020年版の審査基準では、画像意匠の解釈を見直し、不動産が意匠の保護対象となることを明確にしました。

2020年版の意匠に係る審査基準の要点は主に、明細書及び図面の開示要件の緩和、建築物や内装を意匠の保護対象として明文化、意匠の分割出願に関する認定規則の緩和、画像意匠の解釈の修正などです。
 
そのうち、建築物や内装を意匠の保護対象として明確にすることについては、2013年に改正された審査基準において、意匠が「動産」に限られるという制限は解除されたものの、「不動産」が意匠の保護対象になり得るとは直接明言されていませんでした。
 
2020年に改正された審査基準では、「意匠が応用された物品とは、生産プロセスにより重複して再現することができるいかなる製品も指し、工業又は手工業により製造されたものを含み、建築物、橋梁又は内装等の意匠もまたこれに属する。」と明記されていますので、建築物や内装も意匠の保護対象であることは明確になりました。また、該審査基準は改訂され、内装に関する開示例を追加しました。
 
また、今回の審査基準の改正により、画像意匠が応用される物品の解釈も緩和されました。2013年版の審査基準によれば、画像意匠が応用される物品は、スクリーン、モニター、表示パネル、または表示装置を備えたその他の実体物品でなければなりませんが、2020年の基準改正以降は、画像意匠が応用される物品は「コンピュータープログラム製品」などの物理的な形状を持たないアプリケーション、またはソフトウェアであってもよい。それ以来、画像意匠の保護は、もはや実体物品に限定されなくなり、投影や仮想現実(VR)などの新しいテクノロジーによる画像意匠の問題を解決できるようになり、また、画像意匠の保護対象は、スクリーンやモニターなどの実体物品ではなく、画像を生成するアプリケーションであることを明確にしました。
 
五、結論

2013年に我が国の専利法が大幅に改正された後、現在の意匠の保護制度が確立されました。例えば、部分意匠、画像意匠、組物意匠などの重要な意匠の保護強度を強化し、また、関連意匠制度を導入することにより、同一人による類似意匠の保護を強化しました。近年、経済部知的財産局は、時代と歩調を合わせるために、意匠権の存続期間の延長、画像意匠が応用される物品の解釈の緩和等を含む専利法の一部改正や審査基準の改正により、急速な発展と切実なニーズに応えていきたいが、業界の進歩のスピードは止まらず、日々進化する創作開発成果を有効的に守るためには、意匠保護制度の改革も引き続き進めなければならないと考えます。
 
[注1]出処:智慧財産権月刊305期/専利審査実務発展と変革-意匠篇/葉哲維・徐銘夆。
 
※詳細については、ipdept@taie.com.twまでお問い合わせ下さい。
 

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