台湾において、発明の早期権利化を図るために、AEP又はPPH制度を利用することができる。
一、AEP又はPPH制度の概要
この2つの制度における、申請可能な時点、申請できる者、申請事由、初回OA(審査意見通知書、査定書を含む)が発行されるまでの平均日数、政府料金、必要な書類を簡単にまとめると、下表の通りになる。
【AEP】
申請可能な時点 |
台湾知的財産局より「本件は間もなく実体審査に入る」、又は「本件は間もなく再審査の段階に入る」との通知を受け取ってから |
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申請できる者 |
特許出願人 |
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申請事由 |
下記の4つの事由の何れかに該当する必要があります。 事由1:外国対応出願が既に外国の特許庁において実体審査を経て登録査定となったもの 事由2:その対応出願は未だ登録査定となっていないが、米国、日本または欧州特許庁の何れかの特許庁から、審査意見通知及び検索報告を受けているもの 事由3:出願人が商業的実施を予定しているもの 事由4:グリーンエネルギー関連発明であるもの |
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初回OAが発行されるまでの平均期間 |
公開された最新の統計(2022年1月~12月) |
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事由1 |
事由2 |
事由3 |
事由4 |
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約1.5ヶ月 |
約3ヶ月 |
約2.5ヶ月 |
約2ヶ月 |
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政府料金(NTD) |
不要 |
NTD4,000 |
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必要な書類 |
事由1 |
① 公告された請求の範囲又は特許査定書及びその公告予定の請求の範囲(中国語訳が必要)。 ② 外国対応出願の審査過程での全ての審査意見通知書(検索報告がある場合に共に提出)。中国語又は英語のものでない場合、中国語の要約書が必要。 ③ 外国対応出願の請求の範囲と台湾出願の請求の範囲との相違説明。 ④ 外国対応出願の審査過程で引用された非特許文献の資料 |
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事由2 |
① 請求の範囲(中国語訳が必要)。 ② 米国、日本又は欧州特許庁から出された審査意見通知書及び検索報告。英語のものでない場合、中国語の要約書が必要。 ③ 外国対応出願の請求の範囲と台湾出願の請求の範囲との相違説明。 ④ 前記審査意見書及び検索報告において、引例文献を以て、新規性又は進歩性の要件を満たさないと指摘される場合、当該台湾出願の権利化すべき理由。 ⑤ 外国対応出願の審査過程で引用された非特許文献の資料 |
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事由3 |
出願に関し商業上の実施で必要とされる関連証明文献(例えば実施許諾契約書、販売カタログ等) |
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事由4 |
グリーンエネルギー技術である説明 |
【PPH(台日間)】
申請可能な時点 |
台湾知的財産局より「本件は間もなく実体審査に入る」との通知を受け取ってから、初回審査意見通知書が発行される前まで |
申請できる者 |
特許出願人 |
その他の要件 |
下記の3つすべてを備える必要がある。 1、PPHを申請する台湾出願および対応する日本出願において、国際上の第一出願の出願日(Earliest Date)が同一であること 2、対応する日本出願において、すでに特許可能と判断された一又は複数の請求項を有すること 3、PPHに基づく加速審査を申請する当該出願のすべての請求項が、対応する日本出願の特許可能と判断された一又は複数の請求項と十分に対応しているか、十分に対応するように補正されていること |
初回OAが発行されるまでの平均期間 |
公開された最新の統計(2022年1月~12月) |
1.43ヶ月 |
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政府料金 |
不要 |
必要な書類 |
(a)対応する日本出願に対してJPOから出されたすべての拒絶理由通知の写し、及びその翻訳文 (b)対応する日本出願の特許可能と判断されたすべての請求項の写し、及びその翻訳文 (c)日本国特許庁の審査官が引用した引用文献の写し (d)請求項対応表 |
二、よくある質問
1、AEPに関する質問
【Q1】特許出願の審査請求と同時に、AEPを申請することができるか?
A:できない。日本では審査請求手続と、早期審査申請の手続は同時でも構わないが、台湾では必ず、「本件は間もなく実体審査に入る」、又は「本件は間もなく再審査の段階に入る」との庁通知を受け取ってから、申請が可能になる。
【Q2】出願公開前の出願でも早期審査の申請は可能であるか?
A:可能です。
【Q3】AEP申請事由3の「出願に関し商業上の実施で必要とされる関連証明文献」とは、具体的にどのようなものであるか?
A:出願に関し商業上の実施で必要とされる商業(取引)行為を表示できる関連証明文献であれば、全て該当する。例えば、特許出願に係る製造された製品の写真、販売カタログ、実施許諾契約書、産学連携契約書などが挙げられる。ただし、証明文献の内容が中国語でない場合、中国語の要約書を提出する必要がある。
【Q4】AEP申請事由4の「グリーンエネルギー技術である説明」とは、具体的にどのようなものであるか?
A:事由4に係る証明書類について、本願はグリーンエネルギー技術に関する発明である旨の説明或いは証明書類であれば問題がない。以下にて夫々説明する。
(1)説明書類:例えば、「本願の請求の範囲の何れか一項が我が国のグリーンエネルギー技術に直接に関連する発明である」、或いは、「明細書段落、図面又は他の資料によれば、本願の請求の範囲の何れか一項が我が国のグリーンエネルギー技術に関する発明であることを証明できる」旨の説明書類。
例、請求項1に記載の「太陽電池」は、XXが△△を利用して太陽エネルギーを効率的に吸収し蓄積する太陽エネルギーに関する技術分野です。
(2)証明書類
例えば、グリーンエネルギー技術関連の研究計画の証明書類、及び当該研究計画と本願の請求の範囲の何れか一項との関連性を説明する内容
2、PPHに関する質問
【Q1】特許出願の審査請求と同時に、PPHを申請することができるか?
A:できない。「本件は間もなく実体審査に入る」との庁通知を受け取ってから、申請が可能になる。
【Q2】AEP及びPPHを同時に申請することができるか?
A:できない。AEP及びPPHの何れかを申請すべきである。なお、PPHは、AEPよりも早く審査結果を出すので、出願人が同時にAEP及びPPHとの両方を申請した場合、知的財産局は、PPH申請のみを処理する。
【Q3】PPH申請に係る書類(上記書類(a)~(c))について、提出する必要があるか?
A:これらの書類(a)~(c)は、審査官がJPO AIPNからドシエアクセスシステムから入手可能であるので、提出する必要がなく、翻訳する必要もない。ただし、非特許文献はJPO AIPNから入手できないため、提出する必要がある。
【Q4】PPH申請に係る書類(上記書類(d)はどのようなものであるか?
A:書類(d)の請求項対応表は、審査官が「PPHに基づく加速審査を申請する当該出願のすべての請求項が、対応する日本出願の特許可能と判断された一又は複数の請求項と十分に対応しているか、十分に対応するように補正されている」ことを判断するためのものである。
この書類は弊所にて用意するが、請求項がJPOによって特許可能と判断された1以上の請求項と十分に対応していない場合、PPHプログラムに基づく加速審査の申請と同時に、台湾出願の全ての請求項をJPOによって特許可能と判断された一又は複数の請求項と完全に一致するように修正するか、又はより限定されるように修正しなければならない。