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出版品(特実意)
水素燃料電池に関する出願のトレンド。 (2022/12/28)

編集部

世界各国は、燃料とエネルギーの脱炭素化(decarbonize)を目指している背景の中で、クリーンな燃料である水素は、エネルギー貯蔵において重要な役割を果たすと期待されている。天然ガスパイプラインなど、熱を必要とする用途では、炭素質燃料の代替として水素を直接利用することができる一方、それ以外の分野でも、水素の化学エネルギーを電気エネルギーに変換するように利用され、これが燃料電池の原理である。

過去十年間に公開された、燃料電池に関する専利出願のうち、日本からの出願件数が最も多く、それに続いて、中国、アメリカ、韓国、ヨーロッパとなっている。その期間において、水素燃料電池に関する専利の出願件数は、毎年約2000件(パテントファミリーで統計する)が維持されている。

また、分析すると、日本及びアメリカからのパテントファミリーの数はやや減少したが、中国よりのパテントファミリーの数が急速に増加していると共に、過去十年間における専利出願者の上位50社は、9つの産業別に分け、その内、自動車産業からの出願が、出願件数の半分以上を占めており、次に、多国籍企業、およびセラミックスと金属分野の関連企業からの出願が、出願件数の25%を占め、また、前記企業の中の一部は、自動車部品のサプライヤーであることが分かった。一方、残りの出願は、電子産業、化学産業、研究機関及び燃料電池産業からのものである。

更に、下表に示すように、その上位10社のうち、6社が自動車又は自動車部品のサプライヤー、3社がセラミックス関連会社、1社が多国籍企業である。また、その内の8社は日本企業であり、中でもトヨタは2010年以降、2位から4位の出願人による出願件数の合計とほぼ同数の水素燃料電池関連専利を出願しており、強い存在感を示している。

全体として、過去十年間において、水素燃料電池の分野におけるイノベーションは、自動車産業がリードしていると一貫性を示しており、特に日本企業を中心とした。しかし、近年、日本、ヨーロッパ、及び米国では、水素燃料電池の分野におけるイノベーションがやや低下しているのに対し、中国では急成長を遂げている。これらの統計データは、各国の脱炭素化に対する異なる戦略や援助方針を反映している。一方、脱炭素化の発展において直面する問題の対策と水素燃料の将来の可能性を考えれば、今後数年にわたって、水素燃料電池の研究開発は堅調に推移すると予想されている。

もちろん、燃料電池の分野におけるイノベーションは、脱炭素化の全体像において一部にすぎなく、水素燃料電池のより広範な使用を可能にする重要なインフラを提供するために、脱炭素化には、水素の生産や、貯蔵、及び供給などの面において更なる研究開発、投資を行うことが必要である。

資料の出処:Innovation in hydrogen fuel cells: An analysis of intellectual property trends, Marks & Clerk, July 22, 2022.
https://www.marks-clerk.com/insights/articles/innovation-in-hydrogen-fuel-cells-an-analysis-of-intellectual-property-trends/

※詳細については、ipdept@taie.com.twまでお問い合わせ下さい。

 

   

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