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台湾著作権法に係る改正草案

王婉

台湾知的財産局が提出した著作権法の改正草案が2021年4月8日に行政院の審査を通し、該改正案を立法院での審議に持ち込みます。また、今回の改正のポイントは以下の通りであります。

一.  「公開放送」及び「公開送信」の定義の修正

通信技術の発達に伴い、インターネットを通じて番組の送信が益々普及していることから、消費者が送信技術によって権利の類型を区別しにくいので、改正案においては、同一の番組をテレビ・ラジオにて放送するか、若しくはインターネットにて配信する場合(再生できないもの)、何れも「公開放送」と見なし、通信技術によって「公開放送」若しくは「公開送信」に分類しない。                                             

二. 「再公開伝達権」の新設

著作権者の保護を向上するため、「再公開伝達権」が新設される(日本著作権法における「公の伝達権」に近いもの)。例えば、レストランやバーにてYoutubeの動画などを顧客に見せたり聞かせたりする行為は、改正案において、「再公開伝達権」に該当し、著作権法の保護対象となる。

三. 著作財産権に対する制限の修正(合理的使用)

著作者の私的権利を保護する以外に、公的利益をも保護する必要があるため、両者を調和し、改正案において、以下の通り修正する。

1.  「学校による遠隔教育」に係る合理的使用の規定を新しく設ける。デジタル時代の教育政策を実行するため、教師はオンライン教育や遠隔教育を行う際に、他人の著作物(教科書を除く。)を利用した場合、使用許諾を得る必要がない。

2.  電子的閲覧が普及している現在、図書館などの施設において一定の制限条件を満たした場合、館内において電子的閲覧が許可される。

3.  各美術館の文化資産を宣伝するため、展示著作物の所在に関する情報などを公衆に提供する際に、新しく設けた合理的使用の規定で認められる限度において作品の図版を複製しまたは公衆に送信することが可能となる。

4.  現行法では、定期的に行う非営利目的のイベントにおいて、許諾を得ていない著作物の利用は刑事責任を問われる可能性があるのに対し、今回の改正案においては、こうした行為を非犯罪化する。つまり、適切な使用料を支払った後、利用することができ、わざと著作権者の許諾を得る必要はない。一方、一般民衆が普段公園にて持参のプレーヤーで音楽を流しながらダンスするといった健康目的に基づく著作物の利用行為に対して、特別に使用料不要と規定している。

四. 著作権者不明の場合の強制許諾規定の新設

現行法では、著作権者不明や所在が不明であるの場合、著作権法ではなく、文化創意産業発展法に従い、強制許諾の制度を利用することができる。これに対し、改正案において、強制許諾に係る規定を、文化創意産業発展法から著作権法に移した。また、強制許諾の審査期間内において、担保金を利用者が使用報酬の担保として供託することで、先に該著作物を利用することができると規定している。

五. 模倣品に係る販売広告をインターネット上の掲載は著作権侵害行為を見なす規定の新設

できる限り早く模倣品の流通を食い止め、著作権者の権利を守るため、著作権を侵害する模倣品に係る販売広告・情報をインターネットにて掲載する行為は、改正案において、著作権の侵害行為と見なす。例えば、インターネットにて著作権を侵害する音楽を記憶させた「USBメモリ」に係る販売情報を掲載するのは、著作権の侵害と見なす。

六. 使用料に相当する額に基づく損害賠償を請求できる規定の新設

侵害を被った著作権者が民事訴訟を提出し、賠償金を請求する場合、侵害による損害額を立証する責任を軽減させるために、改正案において、使用料に相当する額に基づく損害賠償を請求することができると新しく規定されている。

七. 過酷な刑事責任を調整する

現行法では、一部の著作権侵害行為に対して、最低6ヶ月の懲役が科されることから、軽微事件であっても、過酷な責任を問われた場合があるので、改正案において、該下限(6ヶ月の懲役)に係る規定を削除し、事件毎に裁判所の判断に委ねることにより、過酷な刑事責任を調整する。 

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